ロジスティクス・インサイト「決算概況」

2011年4月-12月期 決算概況
上場企業決算概況と貨物輸送,倉庫セクターのトレンド分析

発行日 2012/03/01

上場企業の決算実績をもとに、陸運/倉庫・運輸セクターのトレンド分析や産業界の動向など、
経営に役立つ見地で切り込んだ定量分析レポートをお届けします。

過去10年の業界毎CAGR

【図表6】CAGR FY02-11

1 エネルギー 12.01
2 医療・バイオ 7.46
3 小売 6.11
4 外食・中食 4.83
5 中間流通 4.08
6 素材・素材加工品 3.46
7 陸運(貨物輸送) 3.22
8 広告・情報通信サービス 2.27
9 輸送機械 2.01
10 食料・生活用品 1.66
11 建設・不動産 1.26
12 機械・電気製品 1.03
【参考】
海運 4.46
空運 1.62
陸運(旅客輸送) -0.67

・2012/2/16時点でFY113月期予想
を発表している3,458社を対象とし、
全期間に亘り売上高加重平均による
業界成長率を算出
・CAGR={(N年度の売上/初年度の売上)
^(1÷経過年数(N-1))-1}*100

ここで、『継続して成長している業界はどこか』という視点で、一定期間を取りあげて、業界毎の期間の平均成長率を計測・考察して みることにします。

期間の捉え方として、最近年における景気循環期転換点(02年1-3月の谷)を経て次の循環に転じた02年4月(*5)から、11年3月期(会社発表予測値)までの期間(10年間)の年平均成長率(CAGR)を算出します。

結果は右のような順位になりました(【図表6】)。「医薬・バイオ」「小売」「外食・中食」といった生活密着型業界が上位に位置付けています。

この結果は、近年10年間における企業業績の稼ぎ手が、輸出・外需型製造業から消費財製造やサービス業にシフトしつつあって、産業構造の転換期を示唆するひとつの兆しであると、推察されます。


物流業界にとっては、戦略的顧客ポートフォリオ視点が必須

こうした産業構造変化の動向のなかで、物流業界にとって喫緊に求められる経営の方向性として、以下2つを挙げたいと思います。

(1)顧客ポートフォリオの多様化志向と創造

既にみたように、輸出の回復は頭打ちになっており、多くのエコノミストが、世界経済の成長ペース鈍化や円高継続懸念により、将来的な展望は開け難いとする予測を出しています。

また、生産拠点の海外移転が進む現象は、工場からの製品物流を主力事業としてきた物流企業にとって、看過できない大きな影響を与えることになります。現在の物流ノウハウを基礎に異業界への横展開を図り、強みとするサービス領域を拡大していくことで、顧客ポートフォリオを多様化していくことが求められます。

(2)マルチオペレーション対応による売上基盤拡大と、経営効率化追求

多くの物流企業が、人件費や傭車等調達原価削減のため厳密なハードルレートを設定し、利益率向上に向けた努力を継続しています。然しながら、これまで産業経済を牽引してきた外需型製造業の回復時期が不透明であるとされる中、固定費抑制だけでは限界があります。今後は、センターやトラック等投下資産についての、徹底した効率運営が求められます。センターや輸送便の24時間対応など、アセットの『マルチオペレーション対応』は、売上基盤拡大とともに収益率向上に寄与すると思われます。

物流業界における経営効率性
業界別固定比率  業界ROIC

・金融、公共サービス(電気・ガス)、
  消費者サービス(娯楽等)及び、空運を除いたランキング

【図表9】貨物輸送各社 ROIC (FY10)

企業名 ROIC
(%)
【参考】売上高
(FY11 4-12)
売上高
増減率
営業
利益率
1 エーアイティー 24.52 11,161 7.3 7.7
2 トランコム 13.80 60,286 11.7 4.7
3 内外トランスライン 13.68 9,368 8.5 8.5
4 近鉄エクスプレス 8.71 200,656 0.0 5.1
5 宇徳 6.90 35,412 29.5 9.2
6 山九 6.85 295,880 5.7 4.9
7 アルプス物流 6.57 52,504 3.5 5.5
8 ヒューテックノオリン 5.90 26,440 3.6 7.6
9 ヤマト
ホールディングス
5.72 971,698 2.0 6.6
10 大東港運 5.70 13,820 9.5 3.1
11 日立物流 5.56 414,232 51.7 4.4
12 郵船ロジスティクス 5.20 232,280 90.9 2.3
13 ハマキョウレックス 5.15 68,619 5.6 7.8
14 上組 4.93 176,117 8.2 9.9
15 名鉄運輸 4.71 66,526 2.0 4.4

※ランキングには海運・引越を除いた
※売上高増減率・営業利益率はFY11年4-9月累積の
前年同期比、%
※ブルー網掛けが、平均値以上の企業

貨物輸送業界の売上高成長率と営業利益 分布

アセットの効率的運営を志向するに当って、ここで、投下資本の効率性、という定量的観点から少し考察を したいと思います。

物流事業者の多くは、輸送及び倉庫保管、流通加工・荷役業務をコア事業としており、センターやトラックなど多くの固定資産を抱える傾向にあります。業界毎の固定比率をみると、港湾運送が最も高い205.5%、陸運・倉庫についても168.7%と業界比で高い(自己資本を上回る固定資産を有する)ポジションにあり、自己資本だけでなく他人資本を活用し、積極的な設備投資を展開する性質の業界であることがわかります。

一方、そうした投下資本に対する本業での利益創出水準(ROIC:投下資本利益率)をみると、港湾運送が最も低く2.29%、陸運・倉庫業も5.43%と低位置にポジショニングしています。これは、同業界が労働集約・装置産業という性質を有することで、事業資本投資規模が大きい傾向にあることに起因すると推測されます。また、基本的にキャリアーの航空機を利用して混載を行う国際航空フォワーダー(利用航空運送事業者)は、代表的なライトアセット産業として、最も高いROICを示しています。

貨物輸送業界に属する上場企業についてROIC実績を調べてみたところ、上位にランキングした企業は、今期の業界成長率(6.66%)或は平均営業利益率(4.43%)を超える伸長を達成した企業が並んでいます(【図表9】)。

こうした企業は、荷主企業の強まる物流効率化・高度化ニーズに応えるべく、強みとする得意領域を軸に、流通加工や最適在庫・配送体制や国際輸送など3PL受託範囲を拡大すると同時に、多重的なオペレーション体制を組み上げることで、複数顧客に対するサービス展開を可能とし、高いアセット稼働率を維持しているものと推察されます。

継続する厳しい外部環境において勝ち残る為には、物流事業運営には欠くべからざるアセットをいかに効率的に運営するかという視点に立った、戦略構築と戦術実践が求められます。

以上

※注記
(*) (1)~(3)は寄与度順
・本稿における業界区分及びデータ提供はUzabase(株)により、図表は当社作成
(*1) 11年度中間決算を発表している上場企業のうち(2011/11/11現在)、8月末・9月末に中間決算を迎えた企業
(*2) 「貨物輸送・倉庫」には、貨物輸送及び保管を主業とする企業を抽出する目的で、陸運・倉庫運輸セクターに属する
   (1)貨物輸送業(2)港湾運送(3)倉庫業者、及び空運セクターに属する(4)国際フォワーダーを含めた
(*3) 日本たばこ産業(2914)については、本年度より適用された会計方針の変更を考慮しない実績を用いた
(*4)「広告・情報通信サービス」には、E-コマース運営企業を含む
(*5) 内閣府による第14景気循環における景気の山は08年2月、四半期基準は08年1月~3月とされている

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