ロジスティクス・インサイト「決算概況」

2012年度上期 決算概況

発行日 2012/12/28

上場企業の決算実績をもとに、陸運/倉庫・運輸セクターのトレンド分析や産業界の動向など、
経営に役立つ見地で切り込んだ定量分析レポートをお届けします。

不透明な時代を切り拓く戦略は

こうした局面下において物流業が採り得る戦略の方向性として、『売上(シェア)拡大』と、『収益力(効率化)向上』の視点から、以下2つを挙げたいと思います。

1.サービス進化・広範化による規模拡大(‘バーティカル戦略’と‘ラテラル戦略’)

【図表8】物流事業者 進化のための方向性

比較優位が難しい、専ら輸配送に特化した運送事業や、単一サービスのみの事業モデルでは、供給過多(デフレギャップ)が引き起こす価格競争に巻き込まれ経営体力を疲弊させる恐れがあります。既存サービスを足場に考えたとき、深化(縦に深耕=バーティカル)と、広幅化(水平展開=ラテラル)と、2つの軸で強みを創出する工夫が必要となります。

まずバーティカル戦略としては、次のような施策が考えられます。

(1)特定地域においてあらゆる物流を請負うプロバイダー、地域共同配送ネットワーク構築などエリア特化志向
(2)業界特化型の物流を追求し、プラットフォーム化を志向
(3)消費財を中心とした温度帯や、流通加工分野での品質検査・保守等の付加価値志向

物流各社にとっては、自社が闘うべき市場を見つめ、需要サイドから分析されたマーチャンダイジングが求められます。そして、ラテラル・モデルとは、輸送・保管・荷役やBPO機能などを合わせ持った複合オペレーション型を指します。物流サービスのトレンドは、単一オペレーションからラテラル・オペレーションへと進化しており、同時に、バリューチェーンをより広範囲で担う高度なノウハウが求められる時代となっています。

これは、複数のインターフェースを管理するコストが省力化され、プロセス全体を捉えた合理化効果が期待できるという荷主企業のメリットとともに、物流業界が多能工を目指し研究努力を重ねた結果が、バリューチェーンの垣根を取払うまでに自らの機能領域を拡げてきたことも背景として、今後も大きな趨勢を形成していくと思われます。


2.資産効率運営による収益性追求

既述のように、企業が予測する業界成長率は下降しており、暫くは国内投資も低水準で推移すると思われます。こうした状況下では、余剰資金をどう振り向けるかという投資の視点と、既存資本の回転率改善による効率化追求、という2つの視点から、次の飛躍の為に採るべき戦術について精査を重ねることが必要です。いずれにしても、採算・収益性のハードルレートを設定し、非効率は徹底的に排除するルールを策定した上で、高度な事業推進が求められます。

ここで、資本回転率と収益率の関係性について、視覚的に確認してみたいと思います。リーマンショックの影響が具体化する前である2007年度から2011年度までの製造業と、貨物輸送業界における平均資本回転率・営業利益率をプロットしたものが下図です。

【図表9】物流事業者 進化のための方向性

【図表10】2007~2009年度 増減幅

  FY07 FY08 FY09 FY10 FY11
営業利益
(%)
製造業 3.10 0.00 0.10 3.26 2.88
陸運・倉庫 5.10 3.93 4.24 4.42 4.11
資材回転率
(回)
製造業 1.06 1.02 0.94 1.00 1.00
陸運・倉庫 1.10 1.06 0.99 1.02 1.03
FY07-09の増減幅
製造業 -96.71%
陸運・倉庫 -16.94%
製造業 -10.68%
陸運・倉庫 -9.84%

全体トレンドを捉えると、何れも07年度以降、資産効率・収益性ともに下落、11年度を底に回復基調を辿っていますが、11年度時点では経済危機前(08年度)の水準には達していません。陸運・倉庫セクターは、収益性はおよそ4~5%、資本効率性は0.98~1.1回の範囲に位置し、製造業と比べると景況による振れ幅が小さいことがわかります。特に、07年度と、不況が現在化した09年度比では(【図表9】)、下落幅に大きな差があります。

陸運・倉庫業界について特筆されるのは、09年度に急激に落ち込んだ後も、利益率はほぼ一定のまま着実に資産回転率を向上させている点です。早朝/昼/深夜と時間帯区分によるセンターフル稼働や、商品共通要素(納品先・荷物・荷姿・エリアなど)による共同化などによって、資産効率を高める努力が、実績に現れたものだと考えます。

物流業界は、不況下においても比較的安定した収益を維持できる、堅実な基盤を有することが特長です。こうした大きな潜在力を基礎に、効率化努力を更に追及していくことで、他を凌ぐ筋肉体質の業界へ新鋭化していくものと推察します。

昨今上場した、海外資本による物流不動産投資ファンド等の活況を見ても、資本家の視点から見た場合、物流倉庫を対象としたインフラ投資は事業として成立するという見立てが感じられます。その是非は別にして、安定性を特徴にした物流インフラへの資本投資は、今後も進むものと考えられます。


最後に

世界は多くの課題を抱いたまま、新年を迎えることとなります。新政権とともにスタートする2013年の日本経済には、どの様な変化や進化が訪れるでしょうか。

本年は、わが国を代表する家電や機械メーカーの巨額赤字が相次ぎ、波及的産業構造を有する同セクターの不振は、成長展望に影を落としています。来年は、業界構造再構築の発現が待たれ、現在進行中の円安基調が続けば、低迷する業界企業に対するOUT-INの大型M&Aが誕生するかもしれません。

我々は、来る年も同様に、ロジスティクスの専門家集団として、取り巻く難局を突破するため知恵を絞り、より一層の品質・精度を希求していく覚悟です。

本年1年間、ありがとうございました。皆様に心より御礼申上げます。来年も一層のご支援を賜りますよう、宜しくお願い申上げます。

以上

※注記
・本稿における業界区分及びデータ提供はUzabase㈱により、図表は当社作成
(*1) 2012年度上期決算を発表している3,602社(2012年12月14日現在)対象。なお金融、公共サービス(電気・ガス)、消費者サービス(娯楽等)は除いた。
(*2) 日本自動車販売協会連合会資料に基づく、DBJ試算。リーマンショック以降震災前までは、08年9月~11年2月、補助金押し上げ効果の測定期間は12年1月~8月。
(*3) 「広告・情報通信サービス」には、E-コマース運営企業を含む。


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