ロジスティクス・インサイト「物流オピニオン」

ロジスティクス・アンケートから読み解く
荷主企業の物流思考 その2

発行日 2013/05/09

前号に引き続き、昨年当社が実施した「荷主企業におけるロジスティクス・アンケート調査」の結果を紹介します。この調査は、特に4つの特定業種(アパレル、メディカル関連、機械・電機、通販・小売)に対して実施したものですが、その結果は同業だけでなく他の業種にも共通する物流課題が抽出されました。その中で、前回は下記設問の回答とそこから読み取ることができる傾向や問題点を検証しました。

・現在の物流運営体制について
・今後の物流運営体制について
・物流を主に管理している部門について
・物流拠点数について
・物流委託先の見直し頻度について

※前回の記事を読む

今号は前回のアンケートに続いて、荷主企業のあるべき姿とそれに至るまでのポイントを当社視点でまとめました。各読者の立場で読みこなしていただき、今後の活動ヒントとして活用いただければ幸いです。

設問11
貴社の物流において今後どのような取組が重要になるか
No 取組項目 非常に重要である 重要である どちらとも言えない あまり重要ではない 重要でない 合計点数
1 (1)在庫の圧縮によるコスト削減 140 81 0 0 0 221
2 (2)輸配送単価・委託作業の見直し 80 120 0 -3 0 197
3 (5)物流センター内オペレーションの改善 55 96 0 -3 -5 143
4 (11)情報システムの見直し 60 75 0 -9 -10 116
5 (8)自社管理体制・組織・人員の見直し 40 84 0 -3 -15 106
6 (6)輸配送オペレーションの改善 25 84 0 -6 -10 93
7 (4)商品設計・包装の見直し 20 75 0 -21 -10 64
8 (10)環境・省エネルギー対応 5 66 0 -9 -15 47
9 (9)倉庫設備、マテハンの見直し/導入 25 45 0 -24 -20 26
10 (3)物流拠点の見直し 55 36 0 -27 -40 24
11 (12)その他 5 0 0 0 0 5
12 (7)新規アウトソーシング・委託先の変更 15 45 0 -18 -40 2

※取組の重要度合いに次の様に点数をつけている。
非常に重要である5点、重要である3点、どちらとも言えない0点、あまり重要ではない-3点、重要ではない-5点を配点している。


No 取組項目 非常に重要である 重要である どちらとも言えない あまり重要ではない 重要でない 合計点数
1 (1)在庫の圧縮によるコスト削減 160 18 0 -9 -25 144
2 (2)輸配送単価・委託作業の見直し 100 33 0 -15 -25 93
3 (12)その他 0 3 0 -3 0 0
4 (5)物流センター内オペレーションの改善 65 18 0 -18 -70 -5
5 (8)自社管理体制・組織・人員の見直し 40 18 0 -24 -80 46
6 (11)情報システムの見直し 60 9 0 -30 -95 56
7 (6)輸配送オペレーションの改善 30 21 0 -21 -105 -75
8 (4)商品設計・包装の見直し 20 9 0 -15 -140 -126
9 (9)倉庫設備、マテハンの見直し/導入 20 9 0 -24 -145 140
10 (3)物流拠点の見直し 20 6 0 -45 -125 144
11 (10)環境・省エネルギー対応 35 0 0 -42 -140 -147
12 (7)新規アウトソーシング・委託先の変更 15 0 0 -33 -140 -158

※取組の優先順位ごとに次の様に点数をつけている。
実施済み又は現在実施中5点、6ヶ月以内3点、1年以内0点、2~3年以内-3点、実施の予定無し-5点を配点している。


まず重要度からみると、下記の5項目が挙げられます。

■NO.1:在庫の圧縮によるコスト削減
■NO.2:輸配送単価・委託作業費の見直し
■NO.3:物流センター内オペレーションの改善
■NO.4:情報システムの見直し
■NO.5:自社管理体制・組織・人員の見直し

全体の傾向として、短期的に収益良化を目的とした取組が上位になり、設備・マテハンや拠点配置見直し、委託先見直しなど、大きな取り組みは下位に位置しています。
まずは自社で取り組むことが可能な範囲内で委託先との交渉や改善推進強化が重要と考えられていることがわかります。

次いで、実施済み又は現在実施中で最も多かった取組み項目は“(1)在庫の圧縮によるコスト削減”であり、2番目の取組み項目に1.5倍以上の点差をつけています。在庫圧縮によるコスト削減が企業において喫緊の課題であることが判る結果となりました。
傾向として、担当者が単独で実施できる取組みについては優先順位が高くなっており、反対に、経営判断が必要なものや、他の部署にも影響がある取組みについては優先順位が下位に位置づけられています。


設問12
物流改善における推進体制

※クリックして拡大

質問12 (1) (2) (3) (4) (5) 無回答 合計
アパレル 16 10 1 1 1 29
メディカル 10 7 2 3 1 23
機械・電機 10 4 1 1 16
通信・小売 6 5 1 2 14
合計 42 26 5 5 3 1 82

物流改善の推進体制は『(1)自社で計画・立案し、実行する』が最も多く、全体の82社中42社の51.2%を占めています。次いで『②物流会社からの提案を活用し、物流会社とともに実行する』が26社で、31.7%の回答でした。

約半数は自社で物流改善を計画~実行している反面、半数は他社を活用しながら実行しており、その実行方法も物流会社との協力で実行している企業が過半数となっています。物流会社の専門性に期待し、提案を受ける姿勢が見て取れるが、結果としてこの提案レベルが前述の委託先への不満足につながっていると推察されます。


まとめ

今回のアンケートからの考察として、当社は以下のポイントに着目しました。

具体的な改善策を策定している荷主企業は少数派であること
改善の情報源を物流企業(委託先・それ以外)から得ることが多いこと
社内改善を実行できる組織を自社内に保有しているのは半数に留まること
改善のテーマはやはり「在庫削減」「コスト削減」であること
既存委託先へ不満を持っている企業は10%程度であり、
   その不満の原因はコミュニケーション不足に起因すると考えられること
   (情報源は物流企業という反面、お互いの制約解消に至る調整まで交わされていない)

上記5つのポイントを見ると、矛盾や原理原則に合致しない部分が見えてきます。物流企業と荷主企業が利益相反関係になることは避けられません。その事実は認識しながらも荷主企業は委託先物流企業を自らの物流情報源とし、自社で独自施策を練ることなく、物流企業からの提案を採用して自社のロジスティクス施策としている一連のストーリーが見えてきます。
これに当てはまる荷主企業は要注意です。結果的に取り組みが硬直化して小さな改善レベルの活動に留まってしまうことで競合他社と比較して高コストとなり、競争力が低下していることに気付かない可能性があるからです。

我々の考える「荷主企業のあるべき姿」は以下にまとめることができます。

客観的に自社を評価する『情報源と評価基準』を持っていること(外部・顧客など)
自社の中期事業計画を実現するための『ロジスティクス戦略』を持っていること
   (短期だけでなく中期でやるべきことが明らかになっていること)
ロジスティクス戦略を『実行できるノウハウ』を自社内に保有していること
中期計画の進捗に合わせて計画を調整できる
    『マイルストーンを設定し、各部門に対しての調整機能』を果たせること
上記実行を可能にする『専門組織』があること

この5つの要件を実践した企業こそが、下記の好循環が可能になるのです。

自社の精緻な現状把握ができる

それを元にした客観的な評価が可能になる

あるべき姿を描くノウハウを持っている

客観評価した現状の姿とあるべき姿のギャップが明確になる

中期事業計画のマイルストーンを設定することで
ロジスティクス戦略の軌道修正タイミングも明確になる

ロジスティクス課題が短期と中期で明確になり、
やるべき施策を常に自社で策定し、物流パートナーと連携して実行できる

日本経済は、段階的なインフレに突入するとの期待感が高まっており、株価上昇を通じた不動産価格への影響も予測されています。
これまでにない経済トレンドが醸成されようとしつつある状況下では、企業経営のあり方として、変化に対応する柔軟な体制構築、それを迅速に決断できる事前の想定が一層重要度を増します。

荷主企業にとってロジスティクス運営はその巧拙によって、成長へのドライブにもなり、足枷にもなり得ることは言うまでもなく、これまで以上にコストセンシティブであること、そして時勢の変化にも対応できる物流ノウハウを確実に自社保有することが、求められているのです。

以上

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