ラサール不動産投資顧問株式会社 代表取締役 CEO 中嶋 康雄 氏

今号では、ラサール不動産投資顧問株式会社 代表取締役 CEO 中嶋 康雄 氏にお話を伺います。
同社は、世界有数の不動産投資顧問会社であるラサール インベスト マネジメント社の日本法人として2001年に設立されました。私募・公募不動産ファンドや上場不動産株式など、さまざまな形態を通じて世界中で不動産投資活動を展開する同グループの総運用資産残高は、約463億ドル(※1)にのぼります。

また同グループは、物流施設への投資を事業の一核と位置付け、世界規模で大規模物流不動産投資・運用を展開していることに特徴があります。

日本市場においても、「ロジポート相模原」(2013年8月竣工予定)に続き、「ロジポート橋本」(仮称、2014年秋竣工予定)と、物流施設供給を加速させており、今回のインタビューでは、その投資戦略の背景について伺いました。

また、国内物流量は低減トレンドにあるという予測が大勢のなか、今後の物流業界について、どのような成長期待をお持ちでいるかコメントを伺いました。

(※1)2013年03月末現在

貴社は2001年に設立されましたが、日本で物流不動産投資を展開するにあたってのねらい、また、その後の経済環境変化のなかで、どのような沿革を辿られてきたか、お聞かせください。

不動産マーケットとしては、日本はアジアで第1位、世界でも米国に次いで第2位という規模を誇っています。
しかしながら、当社が日本進出当時、日本には物流不動産を対象とした投資市場が存在せず、背景について様々なリサーチを行いました。

結果として、『物流施設が投資対象として認識されていない』というシンプルな理由であり、事業のボトルネックとなるような要因は内在しないと判断いたしました。

それ以降は一貫して、極めて安定したキャッシュフローと堅調なテナント需要を有する物流セクターの魅力を、市場に発信し続けてきました。
2004年には日本の物流施設のみを対象としたファンド第1号を組成、後継ファンドも設立しています。
実績としてこれまでに、国内で46棟、約180万㎡(※2)の物流施設を開発・投資しております。

外部環境という点では、ここ10年、競合プレイヤーの参入が相次ぎ、さらには世界規模での金融危機に直面し、大きなダイナミズムとそのうねりを体感してきました。
しかしながら、日本の物流不動産業界を、ライフサイクルという視点で捉えていると、我々の属する市場はまだ成長のアーリーステージにある、と考えています。

それは、先進的な設備をもつ大規模物流センターが日本国内の物流施設ストック全体に占める割合は、僅か2~3%に過ぎないからです。

残りの97~98%は、耐震性やエネルギー効率が低い旧来型の保管型倉庫です。荷主、物流企業、テナントの効率化追及の流れの中で、今後10年~20年かけてこうしたアセット群は徐々に集約されていくと予測されます。
我々はこうした移転需要に適確に応えるため、大規模物流施設の供給を積極化していきたいと考えています。

不動産マーケット全体については、消費人口減少や、あらゆる業界において効率化の要請が加速することで、市場規模としては減少していくのではないか、と感じています。

(※2)2013年04月末現在

貴社のプロダクトポートフォリオは、商業施設やオフィス、ホテルなど多岐に亘っていますが、物流施設というのは、投資対象としてどの様な位置付けにあるのでしょうか?

我々は、「3大運用セクター」という考え方をもっています。

第一に、「物流施設」については、ポートフォリオの基礎を構成するコア投資セグメントです。オフィスや商業施設などとは比較できないくらい、「安定的なセグメント」という評価をしています。二つ目のセクターは「オフィス」、三つ目は「ショッピングセンター等(小売商業施設)」です。どちらも魅力的ではありますが、前者の運用は企業セクターの業績に、後者は個人消費動向の影響を受けやすい、という点が指摘されます。

貴社が物流施設として開発物件を選定する際、キーファクター(評価軸)となる要素は何でしょうか?

「立地条件」がまず挙げられます。もちろん、消費地に隣接しているなど、地域GDPの大きさは第一の評価要素ですが、その他に3つ、重要項目があります。
それは、

①広いフロアプレート②労働力確保の柔軟さ③将来の住宅地化計画の有無です。

①については、複数階層に跨ることなく、広面積のワンフロアを確保することは物流集約化に不可欠であり、効率的ロジスティクスを設計できるか否かのキーファクターです。

次の労働力確保ですが、従来型のDCではなく、大規模TC需要が顕在化しており、ピッキングや仕分け・高度な流通加工作業など多くのパート従業員確保が必要です。
物件選定の段階から、住宅エリアやそれに接する公共交通機関へのアクセシビリティは、十分な検証を行います。

最後のポイントである「住宅化計画の有無」ですが、これは、開発エリア周辺についての将来の宅地造成可能性について、予め検証するということです。
現在の先端的オペレーションのトレンドは、24時間・365日稼動ですから、例えば騒音や交通渋滞などのトラブルを回避し、長期に亘る安定的投資を行う上では、重要な視点となります。

最後に、今後の物流業界の動向や、それに伴う貴社の戦略方向性などについて、コメントをお聞かせ下さい。

この10年間を振り返ると、あらゆる業界で効率化とコストダウンが希求されてきたことで、求められる物流領域は広域化し、オペレーション精度が高度化してきました。物流業界はそれに呼応し、自らの努力で進化していると感じます。

我々は不動産の切り口から、エンドユーザーにとってブラックボックス化していた物流コストを明確化するしくみを提供することで、業界の成長を後押ししてきた、と自負しています。
これからも、当社が取りうるリスクについてはリスクテイカーとしての役割を発揮し、物流業界の新化を後押ししていきたいと思います。

取材後記

昨年後半より、シンガポール政府系や米大手による2,000億円規模の不動産投資法人の上場が相次ぎました。いずれも物流不動産を投資対象とした最大級の不動産投信であり、物流施設特化型REITが市場全体のけん引役として期待を集めています。

こうした活況の原動力は、ネット通販市場の急拡大です。EC市場は2011年に8.5兆円規模となり、12年中には10兆円に達すると予測されています(※3)。

こうした旧来型の流通連鎖からネット&モバイル通販への急速なチャネルシフト、そして産業構造そのものの変革というダイナミズムのなかで、物流不動産マーケットは、今後も旺盛な需要が約束される成長分野であると考えます。

多くの従来型の「保管」重視型の倉庫では、リードタイムを短縮しつつ、在庫を極小化するというSCM(サプライチェーン・マネジメント)の充足にはスペック不足となり、衣料や食品・生活雑貨など消費財のサプライチェーンを充足させるTC型(流通加工型)、かつ高機能な物流センターへのリニューアル・集約は、構造的な実需として存在していると推測されます。

1990年代に台頭した米国3PL業界は、物流不動産投信の存在なしに語れないほど、深く連携しています。日本の物流企業のスタンダートであった「自らのバランスシートに倉庫不動産を!」という発想では、その成長に時間がかかり、あれほどの急成長はなかったはずです。

昨今、製造業などで流行り言葉になっている『分業』あるいは「国際分業」という概念を、いち早くロジスティクスに採り入れた業態が3PLであり、その重要なコンポーネントである「倉庫」をスピーディーに供給する役割が、物流不動産投信だったのです。言い換えれば、物流不動産投信が3PLの急成長を強固に後ろ支えしていたのです。

日本市場における、物流不動産&物流事業者が共存共栄できる真のパートナーとしてのかたちは、それぞれの業界の成長あるいは変容にしたがって、これからも進化していくものと思われます。

(※3)経済産業省「電子商取引実態調査」

ラサール不動産投資顧問株式会社 様 ご紹介

ラサール不動産投資顧問は、ラサール インベストメント マネージメントの日本法人。ラサール インベストメント マネージメントは、世界最大の総合不動産サービス企業であるジョーンズ ラング ラサール グループ傘下にある、世界有数の不動産投資顧問会社。世界規模で、私募、公募の不動産投資活動をしており、ラサール インベストメント マネージメントの総運用資産残高は約463億ドル(2013年03月末現在)。私募、公募、デット、エクイティのあらゆる不動産投資活動を世界中の不動産キャピタルマーケット、オペレーティングマーケットで展開。主要顧客は、世界の公的年金基金、企業年金基金、保険会社、政府関連、その他基金(大学基金など)、個人投資家など。

ラサール不動産投資顧問株式会社

本社
〒100-0005 東京都千代田区丸の内 2-1-1 明治生命館5階
TEL:03-6880-2800  FAX:03-6880-2810
設立
2001年11月
URL
http://www.lasalle.com/jp/
登録免許
金融商品取引業(登録番号: 関東財務局長(金商)第1544号)
・第二種金融商品取引業
・投資助言・代理業
宅地建物取引業(免許証番号: 国土交通大臣(2)第7569号)
会社紹介
ラサール不動産投資顧問は、ラサール インベストメント マネージメントの日本法人。ラサール インベストメント マネージメントは、世界最大の総合不動産サービス企業であるジョーンズ ラング ラサール グループ傘下にある、世界有数の不動産投資顧問会社。世界規模で、私募、公募の不動産投資活動をしており、ラサール インベストメント マネージメントの総運用資産残高は約463億ドル(2013年03月末現在)。私募、公募、デット、エクイティのあらゆる不動産投資活動を世界中の不動産キャピタルマーケット、オペレーティングマーケットで展開。主要顧客は、世界の公的年金基金、企業年金基金、保険会社、政府関連、その他基金(大学基金など)、個人投資家など。

マルチテナント型物流施設の紹介

圏央道の開通で注目の相模原エリアにマルチテナント型物流施設を開発。
・2棟延床面積370,000㎡ 東京ドーム約8個分

(仮称)ロジポート橋本

所在地
神奈川県相模原市緑区大山町403番1(地番)
敷地面積
67,748.64㎡
延床面積
約162,000㎡
構造
SRC造(一部S造)地上5階建、免震構造
設計監理監修
株式会社三菱地所設計
設計監理施工
株式会社大林組
着工
2013年10月
竣工
2014年秋

ロジポート相模原

所在地
神奈川県相模原市中央区田名字赤坂3700番3他(地番)
敷地面積
94,197.27㎡
延床面積
210,826.02㎡(予定)
構造
RC造(梁・柱PC)地上5階建、免震構造
設計監理監修
株式会社久米設計
設計監理施工
株式会社大林組
着工
2012年7月
竣工
2013年8月末(予定)

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