ロジスティクス・インサイト「船井グローバル・スコープ」

イラン・イスラム共和国への経済・金融
制裁緩和による物流・貿易への影響

 船井総研ロジでは、今後成長が期待される経済圏、或は比較的情報収集が難しい国や地域の物流・貿易について、独自取材によって纏めたレポート、『船井グローバル・スコープ』の発行をスタートしました。
 第一回は、イラン・イスラム共和国(以下、イランと称する)における、物流・貿易の現状についてのレポートです。


1. はじめに

 2006年7月に国際連合安全保障理事会の決議1696の可決によってイラン・イスラム共和国のウラン濃縮活動に対する中止が要請されて以来、イランにおいては様々な経済・金融制裁が(核開発・武器弾薬の売買に関わる個人・法人を対象に資産の凍結)執行されました。2011年には国家を対象に経済・金融制裁が執行されるに至り、米国の金融機関を中心に外貨決済の停止によるイランへの経済・金融の引き締めはイランのみならず、他国へも影響を及ぼしています。
 2013年8月のローハニ政権の誕生後は核協議の再開がなされ、11月には安全保障理事会5か国にドイツを交えた6か国との歴史的な暫定合意(『第一段階の合意』)に達しました。その結果これまでの制裁の一部が緩和され、海外の各国企業は今後のイランの経済・金融の動向を注視し、ビジネスの機会を伺っている状況にあります。

 現在、イランは前述の6カ国と核問題の包括的解決に向けた協議を重ねており、昨年結んだ第一段階の合意期限7月20日までには、何らかの進展があるものと状況を観察することになります。


2.イランに対する経済・金融制裁、及び一部緩和を巡る主な動き
時期 事象
2006年7月 イランへウラン濃縮活動の中止が要請される。
2006年12月 核関連原料及び技術の使用が禁止され、核開発計画に関係する個人や企業の資産を凍結される。
2007年3月 イランへの武器輸出が停止され、凍結対象資産が拡張される。
2008年3月 資産凍結の延長、イランの銀行活動の監視、船舶及び飛行機の検査、核開発計画に関係する個人の監視が要請される。
2010年6月 資産及び資金凍結の拡張、一部イラン船舶へのサービスの禁止、他国へのイランの銀行の支店開店の禁止、各国金融機関へのイランでの支店開店の禁止及び預金口座開設の禁止がそれぞれ要請される。また、各国ではイランに寄港またはイランから出航する貨物の検査が要請される。
2010年7月 包括的イラン制裁法(CISADA)成立により、(1)イラン関連のドル決済が全世界で停止、(2)制裁対象と米国が指定したイランの法人、団体、金融機関と取引をする非米国企業や金融機関への米銀との取引の制限が課される。
2011年12月 米国内で、イラン中央銀行と相当量の取引を行う外国金融機関と、米国の金融機関との間でのドル決済取引を原則禁止する「国防授権法」が成立する。
2012年12月 イランが米ドル以外の通貨による取引を行うと発表する。
2013年6月 イランの通貨リアルを売買したり、リアル建ての資産を保有したりするイラン国外の各国金融機関を制裁対象にする大統領令が米国で発表される。
2013年7月 イランのエネルギー・造船・海運・港湾、金属、自動車分野に関わる取引が金額に関係なく制裁対象となる。世界の20大海運船会社が全てイランへの直寄港サービスを中断する。
2013年11月 安全保障理事会5か国にドイツを交えた6か国と、暫定合意(『第一段階の合意』)に達する。
2014年7月20日 『第一段階の合意』期限

3.イランでの主要な港・空港について

 経済・金融制裁が始まって以来、貿易や運送、金融に関わる企業が制裁の対象となることでイラン国内では輸出入の総量は共に減少を続け、国内の物資の不足が顕著になっております。ただし、イラン及び世界各国の金融機関に対する米国の金融制裁の影響の大きさに対し、物流自体に関わる規制はほぼ実施されていないという情報があります。

 下記は駐日イラン大使館へ問い合わせの結果、現時点で貿易・物流に関わる規制はない旨の確認が取れている港及び空港、そして各所の連絡先です。

1- Shahid Rajaee Port (E-mail: info@bpa.ir)
2- Abadan Port (E-mail: info.abd@pmo.ir)
3- Chabahar Port (Fax:+98-222-1414-0545 E-mail:rezvani.zbr@pmo.ir)
4- Asaluyeh Port(Fax: +98-77-2737-6796 E-mail: asaluyeh@bpmo.ir)
5- Tehran Imam Khomeini International Airport
6- Payam Airport


4.イランの物流事情について

【海運】
 イラン国外からのイラン向けの貨物輸送において、直近の事情では船舶での輸送はほぼ用いられていないのが現状です。米国における2010年の包括的イラン制裁法、2011年の国防授権法によって、大手海運会社によるイランへの寄港が制限され、2014年6月時点で正式に解除されていないことが理由であり、海運各社も米国の金融制裁の適用をおそれ、航路を制限している実情があります。

【航空】
 海運輸送の現状に対し、航空輸送については貿易決済の制限を除けば、輸送は実施可能であるという情報を得ております。しかし、イラン国内との決済が発生する輸送については海運と同様に制限を受ける模様です。
現状としては、イラン国内との決済が発生しない輸送(人道支援など)に限り、DHLを例とする大手航空キャリアがイラン国内への輸送を行っております。
一方、日本の貨物航空会社は金融制裁等の波及のリスクを恐れ、イランへの輸送対応を自粛している模様です。

【決済】
 イラン向けの輸出において最大のネックとなるのは、金融取引(決済)です。現段階では邦銀及び外銀のいずれも決済を引き受ける銀行は見当たらないため、L/C・TTの手段に関わらず、貿易取引における決済が不能な状態となっています。

以上


レポートに関するお問合せ
東京コンサルティンググループ
TEL: 03-5745-0781

(注)本レポートは、当社の独自取材によって、概況についてまとめたものですが、正確性・完全性を保証するものではありません。なお、無断での複製・転写・転送等はご遠慮下さい。


イランに関するカントリーリスク情報(英語版)は、こちらからご覧頂けます。
※別ウィンドウで開きます
コファス社


【発行日】

2014/6/23




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