ロジスティクス・インサイト「物流オピニオン」

物流現場における5S活動の重要性

 製造現場に限らず、物流の現場においても5Sの導入は当然のものになっています。しかし「売上アップになかなか貢献しない」「コストダウンと結びつかない」「時間や手間が掛かるわりに効果が見え辛い」など様々な理由から後回しにされがちです。また何のための5S活動か理解していないため、5S活動を行うこと自体が目的となり、結果としてただの美化活動になってしまうケースもよく見受けられます。
 そこで今回は物流現場における5S活動の重要性を提言します。この機会に5Sの本来の意味と成果をしっかりと理解して、正しい取組みの第一歩を踏み出しましょう。


人材不足の現況

 近年、トラックドライバー不足が声高に叫ばれていますが、同じように倉庫・物流センターといった物流現場でも人材の確保が困難になっています。2015年3月に国土交通省が「物流分野における労働力不足対策アクションプラン」を公表していることからも、物流にかかわる各社が深刻な労働力不足に直面していることが見受けられます。
 少子化による労働力人口の減少や、消費税率引き上げに伴う掛け込み需要の影響を大きく受ける物流業界にとって、労働力不足は今後も業務遂行に大きな影を落とすことが容易に予想されます。しかし、何れの企業においても現段階では解消の糸口が掴めていないのが現状です。
 一方の労働者は、高い時給や日払い対応などより条件の良い職場を求める傾向が強いため、物流分野の各社は労働力確保に更に頭を悩ませています。

総務省『平成27年版 情報通信白書』我が国の人口動態と将来推計


人材確保から見た物流現場改善

  労働力確保を困難にしている要因には、賃金水準をはじめとした数字で定量的に計ることができるものの他に、職場の環境や雰囲気、あるいは人間関係といった数字で計れない定性的な要因があります。
  定量面でみた場合、賃金水準については世間並みもしくは世間相場以上に日給・時給を上げることが一つの解決策として考えられます。しかし賃金改定には限界がある上、あまり現実的とは言えません。新しく採用するパートタイム作業者のみ高い賃金(時給)で雇い、既存の作業者は従来の安い賃金のままで据え置くことは困難であるため、結果として人件費の高額な人材派遣に頼らざるを得なくなってしまいます。
  一方、定性面の労働環境や職場の雰囲気は工夫次第で、如何様にも改善・向上させることができます。
  改善のポイントは魅力のある職場、働きやすい・綺麗な職場作りにあります。これまで、危険・汚い・キツいの3Kと言われ敬遠されてきた物流の現場を、快適で働きやすい職場に改善していくことが求められています。女性や高齢者、更には外国人労働者も視野に入れた職場環境づくり・物流現場改善を進める必要があります。



5Sの無いところに進捗管理と生産性向上は無い

  では、どのように現場の改善を進めていけば良いのでしょうか。
   物流現場改善のキーワードは3つあります。それは『5S』『進捗管理』『生産性向上』です。この3つは密接に関わっており、切り離して考えることは困難だと言えます。その考え方のポイントは下記3つになります。

①『5S』の徹底により現場での “異常の見える化” が実現される
②“異常の見える化”を進めることで『進捗管理』を行う環境を整えることが可能となる
③『進捗管理』を進めることで作業や業務の効率が明確になり『生産性向上』を目指すことができる

 『5S』を飛び越えて、いきなり指標の不明確な『進捗管理』を実施することはあまり意味がありません。その理由は、根拠のない数値目標だけの『生産性向上』を目指しても現場が更に混乱するだけで、改善にはつながらないからです。
 5Sの徹底は現場運用ルールと作業手順の構築に繋がります。構築された作業手順を現場に落とし込むことで現場作業の生産性を一定に保つことができ、時間あたりの作業量も安定化します。安定した作業量が確立されることによって基準が作られ、進み遅れの進捗管理ができるようになります。進捗管理は現場で確認することができ、誰もが作業状況を把握できるようにすることも重要です。これら一連のサイクルに随時、改良を施すことで現場生産性の向上を望むことができると言えます。
 基準を作り、そこから作業方法や作業に掛かる時間といった諸々の問題を顕在化させ異常を把握(見える化)する。そして顕在化した問題に対して、改善を進め効率化を目指すのが正しい現場改善=生産性向上へのステップです。
 現場改善は生産性の向上だけを目的にしたものではありません。より良い労働環境を作り、快適で働きがいのある職場を作る行動も立派な改善です。ルールも基準も定められていない・守られていない職場環境で気持ちよく仕事を行えるでしょうか。仕事のしやすさを考慮して身の回りを整えることが最終的に大きな力を発揮します。

総務省『平成27年版 情報通信白書』我が国の人口動態と将来推計   物流現場改善の第一歩は、『5S』を浸透させることで現場作業者の意識改革を引き出すことであると言えます。5Sの導入はマテハンやシステム等とは異なり、初期投資が少ないことが特徴です。多少の投資は必要ではあるものの、大掛かりな社内稟議や経営会議への上申を要する可能性は低いと言えます。今ある資材や備品と知恵を最大限活用することで、それに見合った効果を発揮させることが可能です。一人ひとりの小さな気付きと気遣いが物流現場全体の改善を実現します。

5Sとは

 では、5Sとは何を指しているか説明できますか?
職場をきれいに保つ為の日々の美化活動とは異なり、5Sを徹底することで実は驚くほどの現場改善が期待できます。しかしながら、5Sを正しく理解できていないことで改善のチャンスを逃してしまっている現場を見ることがあります。
この機会に5Sを正しく認識し、物流現場の見える化をすすめましょう。

 まず、5Sとは『整理・整頓・清掃・清潔・躾』の事を指します。これらが全てSから始まる事から、5Sと呼ばれています。ここまでは皆さんもよく知っているかと思います。( “躾” を “習慣” に置き換えているところもあります)
 では、整理と整頓の違いは説明できますか?清掃と清潔の差は?整理と清潔は何が違うのか?
5Sとは?
答えは
 整理・・・要るものと要らないものを区別し、必要なものを選別すること
 整頓・・・必要なものの定位置を決め、表示を行い、いつでもすぐに取り出せる状態にすること
 清掃・・・ゴミや汚れを放置せず、常にきれいな状態を保つこと
 清潔・・・整理・整頓・清掃を徹底し、維持すること
 躾 ・・・作業手順やルールなど決められたことを守り、習慣付けること


いかがでしょうか。ご自身のイメージと照らし合わせて確認してみてください。5Sの定義はこれが正しい!といった絶対的なものはありませんが、解釈としてのイメージを掴んでいただければと思います。


>> 次ページ 5S導入のメリット

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