ロジスティクス・インサイト「物流オピニオン」

運送約款改正による物流業界への影響


3.多重構造の弊害

物流業界は超の付く多重下請け構造となっている。荷主、物流子会社、元請物流会社、地域元請、実車会社と5階層はまだ良い方である。東京から大阪への大型車による幹線輸送。荷主が支払う運賃は、9万円。実車会社が受け取る運賃は6万円を切ることもある。約3万円もの中抜きが当たり前の物流業界。多重構造であるが故に荷主と実車会社の壁は厚い。

今後は、仕事はあっても運ぶべきドライバーがいない。特に、中長距離ドライバーは平均年齢55歳以上とも言われ、今後10年間で運び手が大きく不足する。積込み時の待機時間が2時間を超える物流センターも少なくはない。荷下ろし待機も同様である。特に、路線便と言われる特積事業者の幹線輸送は、朝の荷下ろしピーク時間がほぼどこも同じ時間帯となっている。前日の夜出発した幹線車は、早朝5時から7時の荷下ろしがピークとなる。

なぜなら、午前中配達を実行するには、遅くても7時には到着店のプラットフォームへ荷物が仕分けられていないとならない。ローカル便(同一地域)を除くと、ほぼ全国の発店から朝7時を目指して幹線輸送車が集中する。路線便は積込み時に発店プラットフォームへ18時ぐらいから着車する。出発時間が21時だとしても約3時間は積込み作業時間として拘束される。

幹線輸送を終え、到着店に付いても大渋滞のため、なかなか荷下ろしが出来ない。結局東京~大阪間は約12時間から14時間の拘束が日常となっている。ここでも、選ぶ立場から選ばれる立場への変換が発生し初めている。路線会社の幹線ドライバー、昔は花形、今は高齢化の最たる職種となっている。

4.マーケット変曲点

2017年は物流マーケットの変曲点となる。物流センターで活用できる物流ITの進歩は目覚ましく、自動ピッキング装置やAI搭載WMS・自動パレタイザーロボなどが続々と自動化製品が商品化し量産化されている。しかし、輸配送においては、まだまだ自動運転が本格導入されるには時間が必要である。「働き方改革による労働時間規制」「ドライバー不足」「納品リードタイムの厳格化」「少子高齢化」「メガ・リージョン化」など、どのキーワードを見てもトラック輸送環境は悪化するばかりである。

国土交通省がこのタイミングで放った「運送約款改正」は、まさに時流を見極めるための荷主企業への試金石とも言える。このままドライバー不足の決定的な改善施策が出ないまま2020年の東京オリンピック・パラリンピックを向かえることは脅威である。ひと夏の短い期間であるが、準備期間を含めると世界中から多様な物資が東京へ運び込まれる。

あと3年足らずであるが、日本の物流大動脈はこのまま維持できるのであるだろうか?国策とも言える五輪大会は是が非でも成功させなくてはならない。 そうすると犠牲になることがあれば、民間であり時流を読み損ねた荷主群であることが想定される。

5.あるべき姿へ向かうこと

荷主企業は今回の運送約款改正は対岸の火事と軽視せずに、真剣に向きあうことが肝要である。自社の輸配送実態が、「普通」と「特別」に区分することでどのような影響が起こるのか?トラック事業者も生き残りをかけている。ドライバーへの負担はドライバー採用・確保・安定雇用の最大の妨げとなる。先ず言えることは、既に宅配便や路線便は実行に移しているが、「運賃」は確実に上がる。

さらに、「普通」に加えて「特別」に区分された付帯作業や待機時間もオプションコストとして不可欠な存在となる。理由は、現行の運賃相場のままではトラック事業者はドライバー雇用を維持できないからである。ドライバーの平均所得は全産業と比較して約15%程度低い。このままでは、加速度的にドライバーはいなくなってしまう。前述した自然淘汰される約27%以外に他業界への転職や若手の非選択など、かなり厳しい状況であることを荷主は正しく認識しなくてはならない。

ドライバー確保を困難にさせる取引条件は必然的に切り捨てられる可能性がある。輸送体制の安定的な確保・維持は全ての荷主が考えていることだが、これまでのやり方では安定的な確保・維持は難しい。荷主は、物流会社を選ぶ時代から選ばれる時代へと突入した。これまでの業界商習慣や過剰サービスの追求など、荷主側の問題も山積している。荷主企業は、適正料金を支払い、適切な物流サービスを提供し、元請け物流会社任せにしない輸配送体制を再構築することが焦眉の問題となっている。今からでも遅くはない。自社の物流大改革は、近い将来の行き残り戦略となる。

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【発行日】

2017/10/26


【執筆者】

赤峰 誠司

取締役執行役員兼ライン統括本部長

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