ロジスティクス・インサイト「物流オピニオン」

2018年版 AI×物流大変革期


2-3.現在導入されているAIの事例

 日本において実践的に投入されているAIの技術は、運用サポート、販売・営業サポート、製造・SCM、人材管理等が挙げられます。
 しかし実際にそれらを導入している企業は数少なく、事例も多くはありませんが少しだけ紹介したいと思います。例えば物流業界における事例は以下のようなものが挙げられます。倉庫内のピッキングの際に回転率のいい商品のスペースで渋滞が起こり、作業が滞る問題がしばしば発生しますが、AIを導入することでこの作業順を最適化し作業者の生産能力を向上させるといった事例が挙げられます(※1)。
 このように、物流業界においてAIは頭脳、ロボットは現場作業に活用され始めています。いずれもプログラミングとディープラーニング(深層学習)によって稼働しているものであり、人でなくてもできる作業においては省人化、人より早く計算や処理ができるものにおいては生産性の向上に繋がっています。

3.AIの導入が期待されるワケ

 ではなぜ今日、AIの導入が期待されるのか。
 一言でいうと、AIの導入によって生産性向上・コスト削減・誤作業防止・採用/教育業務の逓減等が実現できるからです。
 物流業界に絞っていえば、2016年の車両一台当たりのドライバー数は約0.7人となっており、運送事業会社はドライバー不足で車両運行ができない状態となっています。また近年では、倉庫内の作業者不足も起こっており、作業者の補助員として自動追従ロボットや無人AIロボットの導入事例等も見られるようになりました。物流企業にとっては労働力を集めるために、他社に負けない様なより競争力のある賃金を提示しなければならないため、人件費や労務費、販管費に相当なコストがかかっています。賃金を引き上げるために金融機関から融資を受け、それでも人が集まらず、廃業する企業も近年はみられます。
 運送事業会社が減少すれば、荷主企業も必然的にサービスや商品の提供、事業の展開が苦しくなり負のスパイラルが発生します。AIやロボットの導入は、初期費用は相当かかるものの、人件費の大幅な削減につながり、長期的にみるとAIを導入しないケースの年額のトータル物流コストと比較すると大幅なコスト削減が可能になります。そして、人手不足によって引き起こされる生産性の低下、売上の減少を防止すると考えられます。現在のAIやロボットのメリットは、単純作業であれば人的ミスの防止や作業スピードの向上も期待できます。
 
 他にも、AIやロボットによって置き換えられる業務としては、物流センターで言えばセンター内の単純作業になるでしょう。また、近年は緊急出荷の要請や臨時の配車要請が後を絶えません。ここでAIが搭載されていれば、予測情報や自動配車によって、倉庫作業者や配車マンが毎日プレッシャーで疲弊することも、戸惑うこともなくなります。サービスレベルの向上や労働環境の改善にも繋がっていきます。
 
 しかしAIやロボットが全て作業を受託できるのかというともちろんそれはあり得ません。一定の単純作業をロボットに任せることで生産性向上と誤作業の防止が可能になり、余剰となった人員をマンパワーでしか成立しない作業工程に注ぐことができるという部分に期待とメリットがあるのです。
 つまりマテハンやロボット、運搬系のAIは、最も効率的に省人化を図れる可能性のあるものです。だからと言ってAIやロボットをむやみやたらに導入することは賢明とは言えません。現在の自社のおかれた状況、優先して改善していくべきことを正しく把握しながら、判断することが求められます。

おわりに

 現在開発されている様々なAIは、現在の物流問題に対する継続的改善の手段として受け止めたほうがいいでしょう。理由は「AIの新時代が来た」と言える様な破壊的なテクノロジーは未だ無いためです。そして恐らく誰もがぼんやりと想像しているように、完全無人化の商業施設や物流倉庫の稼働、発展したAIが搭載された家具家電と共に暮らす世界が2035年頃には当たり前になっているかもしれません。
 その点を踏まえて、人とロボットが共存する現在においてまず導入すべき最適なものは、AI搭載の教育システムではないかと考えています。人×ロボットの共存する業務の標準化を行うためには、教育のフラット化を進めることが最適解と言えます。また教育のAI化を行うことで新入社員への教育に係る工数も大幅に削減可能となります。

 AI開発者は日々絶えず研究を行っているため、我々がAIの時流からほんの少し目をそらすだけで気が付けば驚くほど技術が進歩しているという驚異的スピードを持っていることを再認識しなければなりません。『今はまだ導入しない』たとえこの判断がその瞬間は正しいものだとしても、ではその「今」とはいつまでの期間なのかを確りと定めるべきではないでしょうか。企業毎の現状やマーケットによって変革の時期を見極める基準というものは変わってくるでしょう。自社の物流体制大変革のタイミングはすぐそこまで来ています。


以上



注記
※1 小冊子『2018年版 AI×物流大変革期-国内AI技術の進捗事例10-』

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【発行日】

2018/4/9


【執筆者】

井上 輔

ライン統括本部 コンサルティング事業 東京グループ




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