ロジスティクス・インサイト「物流オピニオン」

物流会社のコンプライアンス違反は荷主の責任!!
「貨物自動車運送事業法」改正に伴う荷主への影響

1.始めに

 2018年12月8日に参議院において「貨物自動車運送事業法」の一部改正に関する法案が可決、成立しました。この法律は、平成元年に制定され貨物自動車運送事業者に対して事業の適正化や合理化を推進するとともに健全な発達を図ることを目的として施行されています。要するに運送事業者に対する法律です。しかし、今回の法律改正で荷主に対する事項も追記され、荷主も無視できない法令となりました。そこで今回は貨物自動車運送事業法改正に至る背景と荷主に係る改正内容を解説していきます。

2.法改正に至る背景

 今回の改正におけるポイントは「悪質な運送事業者の排除」と「荷主対策の強化」です。古くから物流業界のパワーバランスは『荷主>物流企業』でした。しかし、昨今の深刻なドライバー不足とEC市場の拡大をはじめとした配送業務の増加により需給バランスは大きく変化し、そのパワーバランスは逆転している状態です。 本法令の改正に至っては、働き方改革関連法案にある「罰則付き時間外労働規制」が大きく関係しています。運送事業者への規制適応は2023年からとされていますが、現状のまま上限規定が適応されると多くの事業者が遵守できない状態に陥ります。このことにより国内の物流機能が混乱、停止することを政府は危惧しています。そこでそのような危機的事態を防ぐためドライバーの労働環境を改善する目的で本法令の改正がなされました。
全日本トラック協会も長時間の時間外労働が常態化している現状を危惧しており、2023年までの4年間を通して時間外労働時間の削減プランを発表しています。

目標:時間外労働年960時間越のトラック運転者が発生する事業者の割合

平成33(2021)年度(施行後3年目) 25%
平成34(2022)年度(施行後4年目) 20%
平成35(2023)年度(施行後5年目) 10%
平成36(2024)年度(施行後6年目) 0%

【引用:「トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン」(公社)全日本トラック協会】

長時間労働の是正は運送事業者だけでは行えず、荷主の協力が必要不可欠です。いくら運送事業者の自社努力があっても、荷主の理解が得られなければ改善は見込めず、コンプライアンス違反となる運送事業者が後を絶たなくなります。このような「運送事業者保護」の観点から、改正内容に荷主の責任も明記されることとなりました。 既に本法律改正を受けて、大手商社や大手卸売会社が物流改善に乗り出しています。日本中の各荷主にこのムーブメントが押し寄せるのも時間の問題です。

3.荷主対策の強化

本法令改正では運送事業者が働き方改革や法令順守等を適切に推進できるように「荷主対策の強化」として荷主(元請事業者も含まれる)に関する下記3項目が規定されました。




①「荷主の配慮義務」においては委託している運送事業者の労働環境等を荷主が確認する必要があります。もしドライバーの過労運転や安全な運行を担保できない環境であるならば、その原因が荷主にないか調査を行うべきです。その上で運送事業者が法令を遵守できる体制を作っていかなくてはなりません。
 また、製造業をはじめとした荷主企業は国土交通省ではなく、経済産業省や農林水産省等が所管省庁となります。所管轄省庁以外の大臣が当該企業に対して勧告や改善要請、公表を受けるという②「荷主勧告制度」と③「国土交通大臣による荷主への働きかけ」は稀な規定であり、国全体で物流の環境改善に努める動向がうかがえます。

4.荷主のコンプライアンス違反

ドライバーの労働時間は1日原則13時間以内、最大16時間(月間293時間以内)と規定されています。加えて、「連続運転時間(4時間毎に30分の休憩とる)」等の規制があり、600km以上の長距離を一人のドライバーで運行することは難しいと言えます。運行時間から見て余裕を持った運行距離であれば一人のドライバーでの運行が可能です。  しかし、余裕を持った運行であれば必ずコンプライアンス違反が発生しないという訳ではありません。例えば、急な受注が入り東京の工場から名古屋の顧客(納品先)へ出発する直前に、営業担当者から「どうしても15時までに届けてほしい」との要求で10時に工場を発送します。ドライバーは荷主からの強い要求に答えようと、無理をして運行します。すると、下図のように連続運転時間の違反となり、荷主の責任を問われることになります。 注)荷主の責任になるのは強いプレッシャー(「間に合わなければ料金を払わない」等の高圧的な要求)があったことが認められた場合に限る

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