「知らなかった」では済まされない。委託業務棚卸の重要性

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普勝 知宏

船井総研ロジ株式会社 ロジスティクスコンサルティング部
チームリーダー チーフコンサルタント

製造業や通販企業などの荷主企業に対し物流の改善提案を行い、物流拠点の見直しや物流業務委託先の再選定(物流コンペ)を進めてきた。物流拠点の見直しでは、コストやリードタイムだけでなく拠点BCP等のリスクも加味した提案を行っている。
また、物流業務委託先選定ではRFPの作成支援・コンペ事務局などを実行し、定量・定性両面での物流会社評価を行う。現在は物流現場の作業生産性向上や保管効率向上、5Sの導入による倉庫管理の改善に注力しており、各社の物流現場に合わせた改善手法の提供を行っている。​​

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企業のコーポレートサイトや会社案内を見ると、CSRとしてコンプライアンス順守を表明している企業が増えています。

企業の社会的責任において、法定遵守はじめ個人情報保護・反社会的勢力の排除は非常に重要なものとなっています。同時に、その企業の価値・評価に直結するものとして重要視されているのは紛れもない事実です。

物流の現場でも同じことが言えます。そこで今回は、物流現場におけるコンプライアンス違反について考察します。

「昔からこのやり方」の落とし穴

荷主企業は運送約款や下請法、業務委託契約書を再確認することで法規制に対する自社の理解度を測ることができます。

また、各種法令を見直すことで、知らず知らずのうちに法令違反を犯していることが明らかになることもあります。

例えば、運送において荷物の受け渡しは「車上受け・車上渡し」が原則です。

しかし、長年の商習慣の中でドライバーによる積込みや荷卸しがサービスの一環として無償で提供されている場面がまだ多く残っています。

2017年11月に改正された標準貨物自動車事業約款では、トラック運送事業者は「運賃」とは別に「附帯業務料」「待機時間料」「積込み料・取卸し料」の収受が認められるようになりました。

荷主企業は仮にこれまで無償のサービスとして提供されていた役務行為であっても、運送会社から請求があった場合には支払いの義務が発生します。

これを拒否したり、引き続き無償のまま役務提供を強要したりするようなことは法令で禁じられています。

さらに、指定パレットへの積み替え作業や棚入れ業務を納品ドライバーに課している業界もありますが、本約款は特例なくすべての運送行為に対して適用されるため『ウチの業界は特殊だから』『昔からこのやり方でずっと来たから』『競合のA社もまだやっているから』といった言い訳は通用しません。

責任の所在

もう一点、トラックドライバーが行っている行為で注意が必要な項目があります。

それは、トラックドライバーがフォークリフトによる荷役を行う場合、自社資産のフォークリフトを使用して積込みまたは取卸し行為を行わなければいけない点です。


積込みまたは取卸し時に荷主企業資産のフォークリフトを操縦していませんか?荷主企業資産のフォークリフトをドライバーに操縦させていませんか?

これは積地であっても卸地であっても同様です。


貨物事故・人身事故発生時には責任の所在を検証されることになります(責任の所在はフォークリフトの所有者に課せられるのが原則です)。

このようなトラブルを未然に防ぐためにも荷主企業各社は自社が委託している物流業務において、『どのような業務が発生しているのか』『(直接要求していなくても)基本契約や業務委託契約に記載のない業務を行わせていないか』を知る必要があります。

「知らなかった」が故に業務停止や行政処分の対象となり自社の信頼を毀損しないよう、事前の取り組みが非常に重要となります。

以上

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普勝 知宏

船井総研ロジ株式会社 ロジスティクスコンサルティング部
チームリーダー チーフコンサルタント

製造業や通販企業などの荷主企業に対し物流の改善提案を行い、物流拠点の見直しや物流業務委託先の再選定(物流コンペ)を進めてきた。物流拠点の見直しでは、コストやリードタイムだけでなく拠点BCP等のリスクも加味した提案を行っている。
また、物流業務委託先選定ではRFPの作成支援・コンペ事務局などを実行し、定量・定性両面での物流会社評価を行う。現在は物流現場の作業生産性向上や保管効率向上、5Sの導入による倉庫管理の改善に注力しており、各社の物流現場に合わせた改善手法の提供を行っている。​​

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