コンテナ船社とアライアンス再編の今後の行方を知り来期に備えましょう

船井総研ロジ

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日系3船社のコンテナ船事業会社の商標発表

5月末、遂に日系3船社(日本郵船、商船三井、川崎汽船)のコンテナ船事業統合会社の商標が発表されました。

新商標は『Ocean Network Express』(通称“ONE”)となり持株会社こそ東京に置きますが事業会社はシンガポールに置くとのことです。

一見すると日系企業に見えないこと、また本社をシンガポールに置くことなど、昨年10月の発表に次いで日本の荷主企業にとっては驚きをもってこの話を受け入れられたのではないでしょうか。

しかし裏を返せばこれは日系3社がこれまでのしがらみを捨て不退転の 決意を持って合理化し荒波を乗り越えていこうとする意志の現れなのかもしれません。

これまでの発表から事業会社は今年7月に発足し来年4月よりサービスが開始されるとのことで、今後事業統合の準備が急ピッチで進んでいくものと思われます。

この統合により昨年より加速した海運業界の再編は一旦落ち着くことになります。

しかしそれはあくまでこれまでに確定した合併・買収案件が完了するという話であり再編の流れはまだ終わっていないと筆者は考えます。

コンサルタントの視点 「中規模船社の合従連衡は更に進む

コンテナ船業界の歴史を振り返ればそれは船社の合併・買収の繰り返しです。

その波が再び押し寄せたのは2008年秋のいわゆるリーマンショックに端を発した世界同時不況以降です。

それまで中国を中心に2桁成長を続けていた貨物量は翌年2009年には激減し、以降市況は不安定な状態に陥りました。

貨物の伸びも期待できないその状況で船会社各社が進めたのが規模の経済によるコスト削減を追及した船の大型化でした。

しかし、低成長な世界経済や地政学的な諸問題、地産地消の深化により貨物量は船の大型化を吸収する程は増加せず需給不均衡のまま競争は激化、運賃市況は悪化の一途を辿り船会社の収支を圧迫し続けました。

そんな中、2014年頃からからスケールメリットを狙った合併・買収が加速していきます。

特に2016から17年にかけては未だ記憶に新しい韓国最大手の韓進海運倒産など激動の年となりました。

2016年 2月 中国2大社の合併 (China Shipping/COSCO)
8月 韓国船社の倒産 (韓進海運)
9月 フランス船社(CMA)によるシンガポール船社(APL)買収
2017年 3月 ドイツ船社(Hapag)とアラブ船社(UASC)の合併
7月 日系3社(日本郵船・商船三井・川崎汽船)コンテナ船事業統合
12月 デンマーク船社(Maersk)によるドイツ船社(Hamburg Sud)買収

これらを受け2015年に18社あった主要船社数は2018年には10社に集約されます。
日系3社の統合はまさにこの流れの中で取られた施策でした。

一方でこの流れに乗り遅れた船社もありました。

台湾最大手のEvergreen、香港のOOCLなどがそれに当たりますが、彼らの船腹規模は30万~100万TEUである一方、業界最大手のデンマークMaerskは約400万TEU、2位のスイスMSCで300万TEU(統合後の日系グループで150万TEU)等その規模の差は歴然です。

今年からアライアンスは3つに集約され、サービスの均一化は加速した中で運賃の過当競争は今後も続いていくと思われます。

この厳しい単一市場でこれら中規模船社が生き残っていく為の合従連衡が今後も進んでいく可能性は非常に高いと思われます。

今後の注目点

海運市況は需給バランスの動きを見ていくことである程度読むことが可能です。

貨物の急成長が期待できない中、今期交渉で注目を集めた船社の倒産リスクに加え、合従連衡といった供給サイドの動きを弊社は引き続き注視して参ります。

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