第304回 日本型3PL「期待していいこと、出来ないこと」(9)

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

ヤマト運輸さんの「働き方改革」を実現させるための行動は目を見張るものがあります。

運賃値上げプレッシャーは過去最大級レベルであり、荷主企業・3PL・ 元請け物流企業は、相当の覚悟と対策が求められます。

今後の動きを予測すると、

・ヤマト運輸・佐川急便のBtoCタリフの値上げ(実行中)
・ヤマト運輸・佐川急便のBtoBタリフの値上げ(実行中)
・路線大手(西濃運輸・福山通運)の路線タリフの値上げ
・路線準大手(名鉄運輸・トナミ運輸・第一貨物・岡山県貨物など)の路線タリフの値上げ
・路線各社の路線タリフの値上げ
・中長距離輸送の値上げ
・一般区域(常温・チルド・フローズン)輸送の値上げ
・JRコンテナ、特殊輸送(精密機械・重機運搬・ユニックなど)の値上げ

と、今後、矢継ぎ早に荷主回りをすることが想定されます。

*どの程度のタリフ水準が『値上げのベンチマーク』とされているのかは、 次回funai物流オープンカレッジにてお伝えします。
5月開催 http://www.f-logi.com/study/flogi_open_201705.html

交渉によってある程度の抑止は可能ですが、ゼロ回答はとても厳しい様相です。
中でも、以下の状況下にある取引は出荷及び荷受体制の早期改善が
求められます。

・遅い時間の集荷体制(17時以降)
・ドライバーが荷主リフトを利用して荷役を行っている
・荷下し待機時間が問題化している(1時間以上の待ち時間が発生している)

今後は当たり前に思えていた従来の輸送サービスに対する価値観を改め、自社の物流体制を再定義することは、物流担当者や出荷担当者の喫緊の課題であり、重要な使命となります。

それでは「日本型3PLへ期待していいこと、出来ないこと」の続きをお伝えします。

今号は物流サービスにおけるデフォルト(標準)とオプション(追加)について考察します。

物流センターで発生する業務委託費用は、以下の通りです。

(1)保管スペースに関わる費用
(2)荷役スペースに関わる費用
(3)荷役作業(入出庫・梱包・出荷)スペースに関わる費用
(4)事務作業スペースに関わる費用
(5)トラックバースに関わる費用

これら5項目の費用について、荷主企業と3PLにおける認識違いがよく見受けられます。

まず保管スペースに関わる費用については、「坪建て契約」と「3期制契約」の2種類があります。

保管に関わるオプションは、想定保管料を上回った時に発生する在庫過多分
が問題となります。

坪建て・3期制といずれの契約であっても、保管面積は物理的な上限があります。

その上限を超した場合に執る施策は、

(1)物流センター内の他スペースを活用する
(2)外部倉庫を活用する

2方法となりますが、(2)のケースでよくトラブルになることがあるようです。

外部倉庫を活用する場合、外部倉庫と往復横持ち移送費が発生します。

契約時に上限在庫数に関して規定が無い場合(だいたいの日本型3PLでは明記はありません)は、外部倉庫との往復に発生する移送運賃を荷主と3PLのどちらが負担するかで問題となります。

3PL曰く「保管料は契約単価で何とかしますけど、往復移送運賃は荷主負担でお願いします」と。

荷主曰く「在庫商品の保管に関しては3PLの責任なので、そちらで全て賄って下さい」と。

いずれの見解も間違いではなく、揉めると難しい問題です。

このような問題を回避する為には、初期の契約時に「上限保管数量」の設定を明記するべきです。

荷主と3PLは精神的には協業パートナーであっても、取引実態は利益が相反する関係である事実を十分に認識しておけば、このようなトラブルは回避可能な事であり想定の範囲内となります。

*6月22日(木曜日)物流センター立ち上げ・拠点移動をテーマとした
セミナーを開催します。

詳細はこちら http://www.f-logi.com/study/flogi_201706_tokyo.php

次号も物流サービスにおけるデフォルト(標準)とオプション(追加)について考察します。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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